認知症の高齢者が集まって生活するグループホームの仕事は、一筋縄ではいかない大変さがある一方でやりがいを感じる機会も多い職場だ。身体はまだまだ元気で自分自身の身の回りのことが出来る人が大半だが、生活シーンの多くの場面で認知症の症状が顔を出してくる。料理をしている途中で次の手順を忘れ、呆然と立つくす女性や、食堂の椅子から突然立ち上がったかと思うと、仕事に行かなければと玄関へスタスタ歩きだす入所者もいるのである。仕事に慣れるまでは驚くことも多い。なかでも特に新人職員を悩ませるのが、入所者の物盗られ妄想だ。

物盗られ妄想とは認知症の初期に多い症状で、自分がしまった場所を忘れているだけなのに、周囲の誰かがお金や所持品を盗んだと思い込み、確信してしまう症状だ。特に高齢の女性に多くみられる。室内に出入りするホームの職員が、犯人だと言われることも多々ある。当の職員にしてみれば寝耳に水の話で、驚くだけでなく悲しくなるのは当然のことである。中にはショックを受けて退職してしまう職員もいる。物盗られ妄想は、良くある話として広く周知されているのが幸いである。泥棒と疑われても、盗っていないとムキになって言い返してはいけない。認知症の良くある症状だと割り切って、同情してあげたり、話を聞いて一緒に探してあげるようにすることが大切だ。盗まれたと険しい表情で話すその入所者が、別の機会には当の職員の手を握ってありがとうありがとうと感謝を連発することもある。こんなギャップもグループホームでは日常茶飯事だ。

 
 

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